ダイバーシティ推進準備会 diversity

2019 8 30
インタビュー

多様な個性を認め合う「働き”がい“改革」 パナソニックの、ポロシャツからはじまるダイバーシティ

いわずと知れた、大阪発の世界企業パナソニック。
業界を牽引する大企業の「ダイバーシティ」は、さぞや戦略的でシステマティックなのだろう…と思いきや、社員の主体性にゆだねた、実に奔放な方針で推進されていました。
「前へならえ」の社風からの脱却を目指す、パナソニックのA Better Workstyleとは?じっくりとお話をうかがってきました。



「ディフェンス中心」だったパナソニックの会社風土

左から ABWs編集局 井川主幹・本社グループ人事・総務センター 櫻井さん・ブランドコミュニケーション本部 長内さん



「パナソニックは、工数管理や事業計画など、数字やマニュアルで可視化されるノウハウについては自信がある会社です。キッチリとこなし、成果に結びつけられる仕組みが整っているからです。しかし働き方を前向きにとらえ、社員の意識にどう働きかけるか…という部分は、これからが本番です」

 

そう語るのは、ABWsA Better Workstyle)編集局の井川主幹。過重労働、労基法違反などのディフェンス面での課題を解決するのみならず、創業100周年を機に、次の100年を見据えた働き方を考えるための全社プロジェクトが20176月に発足。
そして全社への一層の浸透を目指し、同年11月に専任組織としてA Better Workstyle編集局が立ち上げられました。

全国の社員が出張時に利用できる、明るいサテライトオフィス


パナソニックでは、「働き方改革」ではなく、「働きがい改革」と呼称し、これまでとは違う「攻めの意識改革」を推進しています。

 

しかし、トップダウンで「戦略マニュアル」を渡すだけでは、今までと同じ。あえて数値ありきではなく、社員の自主的かつ主体的な行動で「Better」が生み出されるよう、さまざまな仕組みを作っているそうです。



ダイバーシティは服装から。トラディショナルな会社の、ポロシャツへの挑戦

ABWsの戦略のひとつが、服装自由化です。

 

「私はこれが動きやすいのですが、スーツが好きな人はスーツでいいんです」

井川主幹のこの日の服装は、黒いポロシャツと真っ白なスニーカー。
まるでパナソニック勤めとはイメージできない…といったら失礼かもしれませんが、スーツとは一味違う、アクティブを体現したスタイルでした。



「上司にいわれたことを素直に実行し成果を出してきたパナソニックですが、これからはそれではダメ。個人に考えるクセを付けるため、身近な取り組みとして服装自由化をスタートさせました。社長や役員も、方針発表会にあえてフォーマルでない格好で出てくるようにもなっています」

 

驚いたのは、服装のガイドラインがとても少ないこと。

 

「パナソニック社員の服装意識はもともと硬く、もっと自分らしさを出した方がいいくらい。ポロシャツはインするの?出していいの?で迷う程度ですから、突拍子もない服装で出社する人はいません。逆に、自分にとって働きやすい服装とは何かを、あれこれ迷って考えることが大切です。」

 

服装自由化は、「奥さまとの会話が増えた」と、男性社員の家庭内コミュニケーションにも一役買っています。出勤着がポロシャツに変わり、家庭の家事負担が減ったなら、それも変化への一歩です。




現場の自主性に任せ、効率をアップさせる

ブランドコミュニケーション本部スペースクリエイツ部の長内さんは、本社に異動してきたとき、ラフな服装の社員の多さに驚いたそうです。

「以前の部署はスーツばかりだったので、こんなにも違うかと思いました。とはいえ展示会の設営などもあるので、選べるのはありがたいです」


営業部など、スーツを着ざるを得ない部署からは「うらやましい」という声もあがるとか。しかし、さまざまな事業所がある以上、一律でマニュアル化はできません。だからこそ現場判断が重視されています。

 

「現場によって、最適な取り組み方は変わります。そのため、現場の特性に合わせて自主的に決めてもらっています。もちろん足並みはバラバラ。しかし、どこかのカンパニーで成功事例ができたら、全社を牽引するトップランナーとなります。その事例についていく事業所が増えたら、全社の意識向上は実現可能です」


オフィス風景

 

 

「上司が白いジーンズで出社した日は驚きましたが、社内の雰囲気は確実に明るくなっています」
そう語るのは、本社グループ人事・総務センターの櫻井さん。

 

今まで目の前の数字だけをにらんでいた人が、他の社員の服装や言動にも目を向けるようになり、発想にクリエイティビティが生まれてきたと実感しているそうです。

 

取材中、何度も出てきた「自主自立」という言葉。ABWsの理念が全社に浸透したとき、パナソニックの進化の原動力となるのは、自立した社員ひとりひとりの行動なのでしょう。


 

オピニオンリーダーとしての役割と覚悟がパナソニックを変える

 

井川主幹は、最後をこう締めくくります。

 

「時間管理などディフェンス面での改革も、もちろん進めています。しかし私たちは、もっと全社的なムーブメントを仕掛けたいのです。そしてA Better Workstyleというブランドを掲げ、社員一人ひとりが、自分にとってのより良い働き方(A Better Workstyle)とは何かを常に考え、実行するための改革を、現場と全社の両面で柔軟に並走させていきたいと考えています」

 

 

「うちが変われたら、どこでも変われます!」という言葉の説得力にひそむ、大きな覚悟。パナソニックの「働きがい」が変化したら、多くの会社や人に、勇気を与えるきっかけになりそうです。




 

取材後記

歴史あるパナソニックだからこその、伝統風土をうまく使った「働きがい改革エピソード」の数々。
女性管理職がネイルアートを楽しみ、激務のストレス解消をしている…というお話からは、仕事スタイルをルールで押し込めることの不自由さ、非効率さを実感しました。
風通しの良い社風と、「ダイバーシティは現場から」という言葉を噛みしめての取材。今後もパナソニックの挑戦から目が離せません。