ダイバーシティ推進準備会 diversity

2019 11 11
インタビュー

多様性はすでに職場の中に。大阪城を庭とするホテルを動かす、受容性と柔軟な遊び心(ホテルニューオータニ大阪)

ホテルで働くって、どういうことだろう?

24時間体制でゲストに心地よさと安全を提供する、ホテルニューオータニ大阪。
大阪城公園を望む絶景の会議室でお聞きした、ダイバーシティについてのお話の中には、「仕事をする環境そのものが、人の多様性を自然に成長させる」という、理想のかたちがうかがえました。


特性を見極めた配属が育成のキーワード

(右)管理部管理課 総務能力開発の石丸さん
(左)マネージメントサービス部 営業推進課の堤さん


「ホテルにはさまざまな部署があります。社員の特性は現場に入ってもらわないと見えません。本人の希望部署に配属しても、入社後にまったく違う能力が芽生えていくケースが、本当に多いです」

採用人事や新入社員研修などに携わる、管理部管理課、総務能力開発の石丸さんは、新入社員が第一印象とは違うキャリアを築いていく姿に毎年驚かされると語ります。
ホテルニューオータニ大阪では、宿泊やレストランなどのさまざまな部署をローテーションで経験し、特性や能力に合わせた配属を考えていくそう。定期的な人事異動は少なく、同じ部署でスペシャリストを目指す人、さまざまな部署を経験する人と、異動には個人差が大きいといいます。
ときには、ホテルニューオータニ東京に研修に行くこともあるとか。
「東京とはホテルの規模や雰囲気も異なるので、経験をすることで学びも増え、東京とのパイプも強くなります」


大阪ならではの風土

ホテルニューオータニ大阪は、大阪城を眼下に望む、「唯一無二のロケーション」にある老舗ホテル。大阪城ホールは徒歩数分。イベント参加のゲストや、大阪城の近くという立地に魅かれた観光客が世界中から訪れます。

「大阪の風土は明るいですね。臨機応変なサービスはもちろん、ゲストとの距離も近い気がします」と、石丸さんは語ります。
人種や国籍、目的の違うゲストを受け入れもてなすホテルという職場は、そもそもダイバーシティのかたまり。制度以前に、仕事の中に多様性があるのが当たり前な環境です。
「ホテルの仕事に向いているのは、臨機応変で、いろいろな経験がある人。また、お客様に喜んでいただくために、遊び心がある人も向いています。多様性には、経験と対応力が必要ですから」



明るいエントランスで、ゲストを笑顔で迎えるスタッフ


「入社前にホテルで受けたサービスが忘れられない、という体験から入社してくれるスタッフも数多くいます」
なるほど、自分もそんなサービスマンになりたい、と思って入社を希望する人たちは、そもそもの柔軟性と対応力が高そうです。
ただし、と石丸さん。
「会社の入社説明会では、他のホテルにも行ってみてくださいとお伝えします。企業さんのオフィスと違ってホテルは実際に働く姿を見ていただくことができます。もちろんホテルニューオータニ大阪が一番ではありますが、ホテルごとにカラーは違いますから」


課題は組織力の強化
とはいえ、志高く入社してきた社員も、その離職に関しては悩みどころだとか。

「大阪のホテル共通の課題です。中堅層の離職理由は、独立や家庭の事情など、理由がはっきりしていますが、若い世代は働くこと自体に迷いがある。ホテルのような接客業務が多い仕事では、いかにリアルにコミュニケーションを取れるかがカギですが、まだまだ不足しています」
その課題解決のため、入社1年目は、年4回研修と面談を行い、その後2年目から4年目までは年1回の研修を通じて、現況報告をはじめ、コミュニケーションを取る機会を増やしているそう。
ふと、24時間体制のサービスが求められるホテルでは、シフトで働いている部署のスタッフ同士で飲みに行ったりしにくいのでは?と思い、お聞きしてみました。

「確かに、昔と比べて機会は減っています。しかし会社としても、交流は積極的に推進したい。その思いから、社内研修は給料日に設定し、夜はフリーな時間にしています。強制はできませんが、同期や仲間と集まる機会には、ぜひ飲みに行って欲しいですね」



若い世代の交流も進む! ホテルは「レジャーのある職場」



大阪城まわりや京橋は、飲みに行く場所には困りません。しかしホテルには既に交流の場が揃っています。
その特別な環境をうまく生かしているのが、若い世代。
入社2年目、石丸さんが入社面接を担当したという、マネージメントサービス部 営業推進課の堤さんは、「飲み会以外でも交流は可能」と語ります。
他部署が何をやっているか知るため、同期とレストランを利用してみたり、ホテルのイベントにも積極的に参加しているとか。
「夏場に開催したプールサイドのビアガーデンなどは、PRする側としても実際に体験してみないとと思い、部署のメンバーと行ってみました。一緒に学びながら、コミュニケーションを取っています」


テーブルセットが済んだ直後。開店を待つ、大阪城を眼下に望むレストラン。

石丸さんはこう語ります。
「基礎を学んでもらうために、知識や接遇の研修をしますが、美味しいものを食べたり、泊まるという体験が一番分かりやすく、伝わりやすい。ホテルの人材育成は、その環境を存分に活用して行われています」


安定し始めた、産休後のキャリア
成長と交流の環境が整っているホテルニューオータニ大阪。
働きやすさについてはどうでしょうか。

「ホテルニューオータニ大阪の社員の約3割が女性。ハードな職場というイメージを持たれがちですが、泊まり勤務などは、部署内で柔軟にコントロールしています」


ていねいで的確な応対で、ゲストを案内するレセプションの様子


「ホテルは、不規則な勤務体系のため、結婚や子育てがしにくいという意識があったのは事実。しかし最近、新しい事例がどんどん出始めました。たとえばレストランや調理場で時短勤務をする人が出てくると、あ、できるのか…していいのか…と、意識改革が進み始めます。多様な働き方の受け入れは思ったよりスムーズです」

特に、産休に入っている女性社員の安心感が上がっています。
「かつては、産休からの復職後に、自分のいたレストランや調理場ではなく管理系の部署に配属され、はじめての事務仕事にとまどう女性が多く見られました」
しかしある時期から、時短勤務などに現場が柔軟に対応するようになり、育児をしながら出産前と同じ部署でキャリアを築く女性社員が増えているそうです。


柔軟さで進み始めたダイバーシティの受容こそ、ホテルの底力
さらに、新しい働き方をしているスタッフ同士の輪が、自然発生的に広まってきたとか。
「各部署の柔軟な対応により、多様な仕事スタイルがどんどん社内で認知され、気が付いたら風土と雰囲気が変わっていました。これも、ホテル自慢の多様性の受容力です!」石丸さんはそう笑います。

「今はとにかく、若いスタッフの働きやすい環境をつくることが一番。それは単に制度の話だけではなく、ホテルをさらに好きになってもらうための育成。それがホテルを支える力になります」

老舗ホテルのサービスを、若いスタッフが活気付ける

「ホテルは人生経験がそのままサービスに生かせる、素晴らしい仕事」
と語る石丸さん。

大阪城という絶好のロケーションと、スタッフの多様性の受容力。それが客室やレストランから見える風景を「大阪の明るさ」で照らす、ホテルニューオータニ大阪のサービスの要になっているのでしょう。


取材後記

お客様に対してだけではなく、社員間でも生かされている多様性の受容。新しい人やものごとを受け入れる姿勢が、ホテルの仕組みを支えています。ダイバーシティに関する現場の課題は、石丸氏のいうように、人事総務が指示を出さなくとも各部署で柔軟に対応をすれば、新しい職場風土をつくることができると感じた取材でした。