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OBP Blooming Place への取り組み

OBP Blooming Place

植栽(ナチュラリスティックガーデン)を通じて、まちの中に”自然”を取り込む

 戦前まで砲兵工廠であったOBP地区は、1969年の「大阪ビジネスパーク計画1969」を皮切りに開発を進め、すべての区画にビルが建ち並び開発を完了しました。これをもって新規の開発は一旦打ち止めですが、”まち“は生き続け変化し続けています。

 これからのまちづくりを考えた時に、環境共生や生物多様性との共存を通じた持続可能性は重要なテーマです。幸い、OBPは初期計画から「緑と太陽を享受する街」というコンセプトを受け継いで来ており、大阪城公園に隣接する立地もあって「公園の中の都市」として、オフィス街としては稀有なほど緑に恵まれています。この特色を活かしたまちづくり活動の一環として、2021年よりナチュラリスティック(自然風)な植栽活動「OBP Blooming Place」に継続して取り組んでいます。

 

OBP Blooming Placeの概要

 OBP Blooming Placeは、OBPの北側を流れる寝屋川沿いから、南北のメインストリートであるパークアベニューのけやき並木の足元に沿って広がるナチュラリスティックな植栽群です。種類が多く一年を通じて様々な草花を楽しめる「宿根草(ペレニアル)」を用いて、それぞれの植栽をデザインし維持管理しています。自然に近い環境をデザインしているので、花だけでなく葉や茎を楽しむ植物も多く植えられていますが、一年中、多様な花が季節に応じて咲くようにデザインされていることから、OBP Blooming Placeと名付けられました。
 草花を愛でる花壇であるだけでなく、ハチやチョウが好む蜜源のある花をつける宿根草が豊富にあることで、それらの昆虫が頻繁に飛来するようになっています。もともとOBPは水辺や大阪城公園の森に隣接しているため、生物多様性が身近な都市ですが、その多様性をまちの中に取り込むのにも一役買っています。

寝屋川沿いのナチュラリスティックガーデン

OBP Blooming Placeの第一弾として、2021年のスタートからメンテナンスを継続しています。
風通しや陽当たりの良さに恵まれ、時間経過とともに多品種の宿根草が根付いてきました。さまざまなオーナメンタルグラスの間に異なる品種の花が咲くガーデンへと成長しています。花の種類も豊富なため、飛来する昆虫も多様になり、一年を通して生き物が訪れる場所になっています。
一見自然のままであるかのように感じる花壇は、常にメンテナンスされ季節とともにダイナミックに変化し続けています。

 

けやき並木 足元のナチュラリスティックガーデン

パークアベニューのけやき並木は、まち開きした1980年代に植えられ、40年近い年月を経てOBPを代表する緑の並木として、OBPで働く人々の心を癒してきました。
その足元にナチュラリスティックガーデンを配置し、日照量や人の往来に応じたゾーン分けをして、変化や多様性を楽しんでもらえる空間づくりをめざしています。

 

ナチュラリスティックな植栽とは

 植物を健康的で自然に近い状態で生育できるように、環境にあった植物を自生種だけではなく外来種も含めて選定し、『組み合わせ』により植物コミュニティと呼ばれるその場に調和したデザインを創り出す手法。花の季節だけではなく、オールシーズンを通して移ろい日々動き続ける植物の一生を動画のように楽しむ植栽です。持続可能性を実現し、生物多様性に貢献するという特徴があります。

 

OBP Blooming Placeのアクセス

京橋駅片町口から約5分。寝屋川を渡った川沿いのエリアと、南北に伸びるけやき並木通り(パークアベニュー)のけやきの足元に設置されています。

 

OBP Blooming Placeの拡大

 ナチュラリスティクな植栽へのアプローチは2021年より始まりました。当初は、風通しも良く日照にも恵まれている「寝屋川沿い」と「城見1丁目交差点四つ角のけやき足元」を選び、どのような景観が作り出されるのか、宿根草が安定的に生育するのか、メンテナンス上の課題などを確認する一年目となりました。

 2年目となった2022年は、「川沿い」「交差点」それぞれのエリアで植栽面積を拡大しました。1年が経過して宿根草の根が張り、植栽全体がより一層自然を感じさせる空間となりました。

 そして2024年、「けやき足元」の植栽をパークアベニュー北側全域に拡大しました。このエリアは、高いビルに挟まれている上に南北に長く、既にけやき並木が生い茂っているので、場所によって生育環境に大きな差が生じます。このため、南北を複数のゾーンに分けそれぞれにデザインコンセプトを変える手法をとっています。
 今回の拡大によって、寝屋川沿いとけやき並木の植栽がはじめて繋がりました。点として独立していたナチュラリスティックガーデンが線として繋がった事で、どのような景観が生まれ空間に変化を与えるのか、これからの宿根草の生育が楽しみです。

2021年

2021年 OBP Blooming Place
寝屋川沿い花壇10㎡
けやき足元4ヶ所
(城町1丁目交差点 四つ角)

2022年

2022年 OBP Blooming Place
寝屋川沿い花壇25㎡
けやき足元8ヶ所
(城町1丁目交差点 四つ角)

2024年

2024年 OBP Blooming Place
寝屋川沿い花壇25㎡
けやき足元44ヶ所
(城町1丁目交差点 四つ角と
パークアベニュー北側全体)

南北のメインストリートをゾーン分けして、空間に変化を演出

 OBP Blooming Placeは宿根草植栽地として規模は大きくないものの、ビル群における新たな植栽の可能性にチャレンジしています。特に川沿いの植栽地から南北に伸びるけやき並木へと続く、場所によって異なる環境に対してゾーン分けをして、それぞれに合わせた植栽デザインを用いながら連続性を形成する手法は、全国的にも例の少ないアプローチとなっています。
 ゾーン分けによる連続性確保により、南北に長いパークアベニューはペレニアルストリートとして生まれ変わりました。

 具体的には、

  1. 川沿いに接続する北側部分は、比較的日照量が多いことから川沿いの環境に近くデザインも連続性のある「メドウ」ゾーンとし、日照を必要とする宿根草を主体にデザインしました。
  2. 中央部分は、両サイドのビルの接続部であることから「ミックス」ゾーンとし、人の往来を意識して華やかさを感じられるようにしました。
  3. 南側交差点手前の「ウッドランド」ゾーンは、高層ビルとけやきの日陰になりがちであるため、森の中の樹木の足元のように、耐陰性のある宿根草を主体にした構成としています。

 

2024 OBPペレニアルストリート計画図

 

2024年度 けやき足元 拡張造成の過程

 2024年は、パークアベニューのけやき足元36箇所が新たにナチュラリスティックガーデンに生まれ変わりました。2021年と2022年に開設された「寝屋川沿い」と「城見交差点」をつなぐ役割を持つエリアです。

 

土壌整備(造園職人による作業)

 ナチュラリスティックガーデンの設置において、土壌の改良と整備は、地道ですがとても重要な作業です。土壌整備はメンテナンス負荷や宿根草の寿命を左右するからです。今回の対象であるけやきの足元は、草花を植えて育てるには過酷なスペースでした。地中で行き場のなくなったけやきの根が地表近くまで上がってきており、植え升全体にびっしりと張り巡らされていました。(けやき植樹から)40年という年月を感じました。

地表面まで、けやきの根が出ていました
手作業で根を丁寧に取り除きます

 スコップや根切りなど様々な道具を使いこなすことのできる熟練した職人が4、5人で土をほぐし、根をほぐし、取り除きます。けやきの負担を小さくするために丁寧に取り除く必要があります。けやきの根の育ち方具合は様々で、一つのマスで1時間以上かかる場所もありました。この作業をしっかりやるのとやらないのとでは、その後の草花の生育に大いに影響します。今回は、この点に特に気を使いました。

取り除かれたけやきの根
余分な土を取り除いた後、腐葉土を混ぜ込みます

 

宿根草を植える作業(ナチュラリスティックに熟練したガーデナーによる作業)

 全部で36マス36種類のデザインが施されました。しかも、デザインの連続性や環境適応などが考慮されており、その複雑さは想像を超えるものでした。
 植物の一生を楽しむ植栽であり、それらが複数組み合わされた植物コミュニティーによるパフォーマンスがオールシーズン通して展開されるのがナチュラリスティックの醍醐味です。

けやき足元のマスごとに、異なるデザインで何種類もの宿根草を配置します
デザイナーの意図を考慮しながら、実際のマスの環境に合わせて植物をプロットしていきます

 デザインには、植える場所による微妙な環境の違いも考慮されています。数多くの草花の種類を草姿だけで見分けられなくては図面があっても配置もできません。ガーデナーは、それらを見分ける知識はもちろんのことデザイナーの意図をわかっていなければなりません。植える向きや間隔、傾斜がある場所は、乾きやすい場所か水が溜まりやすい場所かの判断、光の当たる角度や向き、端のほうは歩行者に踏まれる危険もあるなど、様々な要素を把握した上で、繊細に配置場所を決めて植えていきます。

 現場では、細かなコミュニケーションがおこなわれながら慎重に作業が進められますが、ガーデナー同士の阿吽の呼吸も必要です。日本では、まだ実践されて日が浅い技術ですので、全国の人の繋がりで仲間同士協業しながら、技術を高めています。ここOBPでは、初年度は横浜から、昨年と今年は、福岡から確かな技術と経験のあるガーデナーを招聘し造成をしています。そうすることで、OBPで経験したことを各自の地元に持ち帰ってもらいことができます。ここではガーデナーの職業認知ということにも力を入れています。

こんな小さなマスでさえ、多様な植物を1つずつ位置や向きを考慮しながら植えていきます
植え付けが晩秋であったため花はありませんが、来春から順番に少しずつ葉を伸ばし花を咲かせて変化していきます

 植え付け完了。通常の植栽ならこれで完成ですが、ナチュラリスティックガーデンではこれがスタートです。時間と共に変化しながら宿根草が根付き、数年後には大阪ビジネスパークの代表的な風景となるでしょう。その日が楽しみです。


 このようにして、エリア内に点在する形だったナチュラリスティックガーデンが、1つの線として繋がりました。将来的にはパークアベニューの南側にも拡大していく予定です。年月を経て宿根草が順調に根付き生育していけば、1つ1つは小さな植栽が「まちの景観」を形成するはずです。けやき並木とナチュラリスティックな植栽が、「公園の中のビジネス街 OBP」の顔となる日が来ることを期待して止みません。

 

OBP Blooming Placeに植えられている草花は以下からご覧いただけます

 

OBP Blooming Place に関するお問合せは

大阪ビジネスパーク協議会まで、下記フォームよりお問合せください。