vol8 ビルやエリアの垣根を超えて、災害に強いまちに!OBP式リアル防災訓練

2017年11月21日に、大阪ビジネスパークにおいて、OBP協議会主催の「帰宅困難者退避誘導訓練」が実施されました。実は、OBPの防災訓練は大阪市内でも進んでいる取り組みだと知っていましたか?
OBP Style 第8回は、「OBP帰宅困難者退避誘導訓練」についてレポートします。

2016年から始まった、ビジネスエリアの防災訓練

訓練資料

昨年度より始まったOBPの防災訓練。画期的な点、それは「エリア単位で行う」ということです。
通常ビル単位での訓練は各地で行われますが、OBPにおいてはビル同士の連携を考えます。いつどのような形で起こるか分からない災害は、ビルの中で避難が完結するものではないからです。
今回の訓練には、自治体やエリアマネジメント団体から見学者も40名ほど来られました。

昨年度とはストーリーを変えて

ツイン21南プラザ

昨年度は11月に南ブロック(ホテルニューオータニ大阪ビル、住友生命OBP城見ビル・OBPプラザビル、OBPキャッスルタワービル)で訓練が行われ、まず災害が起きた時、どこへ逃げたら良いか、ビルからどのように避難するのかということを体験してもらう訓練となりました。

一方、本年度は北ブロック(読売テレビ本社ビル、大阪東京海上日動ビルディング、マルイトOBPビル、KDDI大阪ビル、富士通関西システムラボラトリ)で行われ、災害が起きれば必ず出るであろう“帰宅困難者”を想定した訓練に。ツイン21南プラザを「一時退避場所」として、同場所へ災害対策本部も設置。

避難 テント設営

避難者は、ビルからの避難経路を実際に歩き、一時退避場所へ到着後テント設営、非常食の炊き出しを体験しました。

周辺地域の参加は一歩進んだケース

桜宮連合振興町会

今回、北ブロックの5社(富士通・讀賣テレビ放送・東京海上日動火災保険・KDDI・マルイト)に加えて、都島区の桜宮連合振興町会(以降、桜宮連合)からも22名が参加。実際地区外の帰宅困難者が出た場合を想定し、受入の対応も訓練されました。
オフィスエリアにおいてこのように周辺住民と連携を図る形は市内でも珍しく、よりリアルな想定となっていました。

桜宮連合

桜宮連合の参加者は、自らの地域でも日頃より防災訓練はされておられるとのことで、初めて参加された方もいる中、テント設営も大変スムーズに、参加者内で連携のとれた動きを見せていました。
桜宮連合副会長の玉川さんは、「実際は桜宮エリア内にも避難場所はいくつかあり、マンションも多く、淀川氾濫など水害に対しては逆にマンションの中の方が安全だということも考えられる一方で、物資の不足に陥る可能性も併せ持っている。やはり連絡系統を整え、日頃から訓練するといことは大切です。」と防災訓練に対する考えを語られました。

各企業が最先端技術を駆使した防災グッズを展示

避難場所としたツイン21南プラザでは、防災対応に関する機器などのデモや展示が行われました。

大阪市防災アプリ

大阪市防災アプリ

大阪市では南海トラフ巨大地震による津波等を想定し、避難に関する情報をまとめたアプリがあるとのこと。
災害時の避難施設案内や、ルート検索が可能。声が出せない緊急時に利用できる「ふえ」を鳴らす機能も。
→詳しくはこちら

NECのインフラレス通信アクセスポイント・ペーパーレス・VR消火体験

NEC

NECでは紙がなくても書き込める電子ペーパーや、VRを利用した消火体験を展示。

NEC

また、インフラレスでどんな場所へもアクセスポイントを持ち運べるネットワーク装置を開発。バッテリー駆動で電源が無くても8時間稼働する、心強い無線通信環境について展示。
今回はこのアクセスポイントを訓練でも実際に使用。デジタルサイネージをエリア内で数カ所設置し、実証実験が行われました。

KDDIの災害用伝言板サービス

KDDI

通信キャリアとしてのKDDIは、東日本大震災からの反省を活かし、ネットワークの確保と充電の確保として、様々な接続箇所の形式を用意した充電バッテリーや、Wi-Fiに繋がる携帯装置を展示。
東日本大震災で多く見られたのは、携帯電話は持って逃げるけれども、充電器は持たずに避難するため電池が切れて連絡が取れないことだったとか。

Panasonicの様々な防災関連用品

Panasonic

Panasonicでは、災害が起こった時に役立つ防災関連用品を複数展示。
中でも日本語・英語・中国語・韓国語の4カ国語に対応したメガホン型翻訳機は、スマートフォンが装着され、設定を行った国の言葉で避難誘導の案内ができます。外国人旅行者の増えている近年では大変有効なアイテムでした。

大阪府警東警察署の救助資機材

東警察署

警察署からも展示が。東日本大震災や広島県安佐南区土砂災害、九州豪雨災害の状況を知れる写真展示のほか、ごはんとパンの非常食も配布されました。
実際に災害が起こった場合は、大阪府から支援物資が届くとのことでした。

発電機利用実験

発電機利用実験

災害時に本部等での電力供給を想定した発電機の利用体験を行いました。
発電機はホンダ製。カセットボンベ2本で操作も手軽に発電ができ、コンパクトながら1〜2時間は発電可能な装置です。
体験者の方も手軽さに驚いた様子でした。

訓練で見える「意識の低さ」と体験して得る「気づき」

残念ながら、訓練参加者に感想を伺うと、「会社で言われた」ために仕方なく参加しているといった”義務感”が見えたのも事実ですが、体験することは少しでも“自分ごと”になるきっかけを生むことも見えてきました。

炊き出し体験

今回参加した企業の40代女性ワーカーは「例えば非常食などはどうやって作るのか、作るのに何が必要か、などは経験してみないとわからないことであり、体験できたので良かった。」という気づきとともに、「準備されていたテントなどは、いざ災害が起きた時どうやって準備するのだろうか…」という疑問も生まれていました。
また、別の企業の40代男性は初めての参加だと言うことで「メーカー各社の試作品は避難誘導にどのように使われるかを知れたので、大変参考になります。」と興味を示されました。

「共助」が必ず必要になるOBP

舟越事務局長

対策本部長をされているOBP協議会の舟越事務局長にインタビューをしたところ、
「ビルそれぞれにおいては各企業で備品がしっかり整っているものの、エリア全体となるとやはり難しいものがある。OBP協議会としてはエリア全体のために、テントなどハード面の備品について国に掛け合いしっかりと準備を進めていきたい。ただし、OBPというのはビジネス街で住民がいないので、いざ災害が起これば行政からの支援は遅れると思われます。しかしそんなことは言っていられない状況では、『自助』『共助』ができるようにしておかなければならない。つまり日頃OBPで過ごすワーカーの経験や意識が大変重要になってくるのです。」と、語られました。

仕掛ける方が諦めたなら、終わり

小田事務局次長

今回の防災訓練を主導されたOBP協議会の小田事務局次長は、
「昨年度から始まったこともあり、今は何事も基礎を作る段階であると思う。備品は何がいる?避難はどのようにする?連絡体制は?人的体制は?等、具体的イメージがいかにできるかが大切です。いざ災害が起こった時、多くの方はすぐに国や自治体が救援に来てくれると思いがちだが、実際は役所もすぐには動けないのです。だからこそ我々OBPワーカーは訓練によって体感したことを思い出し、各々が行動に移せるようにしておかなければならない。」と語ります。

また意識の面では、ワーカーの多くが別の地域に住んでいるため他人事に捉えがちだとのこと。
「意識を上げるためには、訓練の主催者側も根気を持って何年かかろうとも訴え続ける覚悟が必要。仕掛ける方が訴えを諦めてしまったら終わり。実際の災害がいかに怖いか想像できる人たちを増やしていきたい。」と今後の抱負を述べられました。

再来年度はOBP地区全体で訓練を

来年2018年度は西ブロック(ツイン21、松下IMPビル、ケイ・オプティコムビル、クリスタルタワー)で訓練を、そして再来年2019年度にはOBP地区全体の帰宅困難者退避誘導訓練を予定されているそうです。
西ブロックだけでも約16,000名、さらにvol.7でも紹介したようにケイ・オプティコムビルへ入るワーカー約4,700名が加わります。総勢約21,000名という人数の避難想定をしなくてはなりません。OBP地区全体で4万人を超える人数となります。
数字だけ見ても想像が及び難いものがありますね。

これだけの人数に加え、観光で来ている一般の方が集まったOBPで、本当に災害が起こってしまうと、恐らくは多くの方がパニックに陥るでしょう。
日頃仕事で通うワーカーの方々は貴重な人的資源になります。「訓練」ということに甘んじることなく「訓練だからこそ」の意識は常に必要ですね。

Wanted!

OBP Style では、特集記事のネタを募集しています。
OBP内のイベントや活動、人、場所あるいはOBPに対する疑問、もっと知りたいことなど。
大阪ビジネスパークに関するテーマ限定ですが、様々なテーマを掘り上げていく予定です。
ぜひこのテーマをというのがおありでしたらご一報ください。
ご連絡は『OBPスタイル編集部』まで 

ページの先頭へ