2017年12月・2018年1月と2回にわたり、OBPではワーカー参加のまちづくり会議が行われました。OBPがこれまで働き手の意見を直接聞く機会を設けてきた中でも、今回は参加者全員がエリアのワーカーであるといった、より本格的な意見交換の場となりました。
さて、OBPで働く皆さんは日頃どのような想いを抱えているのでしょうか。
OBPのまちづくりを目指してワーカーたちが集まった
全国のエリアマネジメント団体とも交流が深いOBP協議会の舟越事務局長に伺ったところ、OBPではまちづくりへワーカーの声を活かそうと一昨年より地道に継続している点でユニークとのこと。
今回の主催は「OBPアカデミア」。OBPの活性を目標として、学びと交流の地域拠点になるようコワーキングスペースを運営しています。
OBPアカデミアの会議室では、仕事終わりにも関わらず各日約20名のワーカーの皆さんが集まり活発な意見交換が行われるのでした。
バラエティに富んだメンバー
参加したのは、OBP内で働く会社員や、経営者、フリーランス。ここに来た全ての方の共通点は“OBP内で働いている”です。
年齢は25歳〜64歳、職種も営業・技術・総務や経理・企画・サービスなど多種多様。それぞれの“OBP歴”も直近1ヶ月の方から、10年以上のベテランまで。非常にバラエティに富んだメンバーとなりました。
普段なら関わることのない相手と盛り上がる
ミライ会議…「会議」と言っても机を囲んではしません。
手法としては「フューチャーセッション」と呼ばれるもので、未来に向けた協働アクションについて“対話”により生み出すワークショップでした。
お菓子を食べながら、話し合いの場所も、メンバーも毎回変わります。
テーマ自体は頭を回転させなくてはなりませんが、終始皆さんはリラックス。普通に仕事の行き来をするだけであれば出会うことのなかった相手と、会話を楽しみながら、ワークショップに取組みます。
このセッションを取り仕切るのは、組織開発コンサルタント・ファシリテーターとして活躍される江口雅祥氏。
このOBP Styleではvol.1、vol.2でも登場しているように、OBPでも度々活躍されているプロのファシリテーターです。
“言いたい放題”で出てきたのは良い点よりも悪い点
江口氏によると、1回目で問題を洗い出し、2回目で問題点をクローズアップして深掘りするといった、2段階のストーリーがあったそうです。
まず問題を明らかにすることがポイントになる1回目。心の内に持っている問題点をできるだけ出せるように、どのような場所、時間帯、場面で問題を感じるかなど、問いを細かくします。
気がつけば、ワーカーの皆さんが答えやすく、そして、“言いたい放題”の状況に。
さすが毎日OBPで働く皆さん、自身で感じることも多いのでしょう。
良い点・まあまあな点・悪い点、とそれぞれを出し合ったものの、どのグループも悪い点が多めです。
環境や美観の問題、交通面での案内の不明瞭さ、商業施設の不便さなどなど・・・日頃のリアルな意見がたちまちのうちに出てきました。
OBPで働く誇りを持ちつつも、プライベートでは「来たくない」
ワーカーの皆さんには事前にアンケートが取られていました。
そこでは参加者自身のことに加え、OBPについてのイメージ、OBPの取組みの認知についても問われます。
アンケート(1日目)の結果はこちら。
働きやすさ、環境の良さ、愛着を持っている、などに良いイメージがあるようです。
とは言え、そう答えた方も50〜60%。「どちらでもない」方も40%程度いることから、「良くも悪くもないが、どっちかと言えばまぁ良い方」というような台詞で表せるのかもしれません。
一方で、プライベートの時間をOBPで過ごすことについては、「どちらとも言えない」意見はゼロ。過ごす派と過ごさない派が真っ二つとなりました。
はっきりと場面で分かれた印象の良し悪しですが、江口氏によると「半分は『仕事だけでいいや』という方々、もう半分の方々が『期待・愛着を持っている』と思われる。ここには仕事だけではない“何か”への期待が現れているので、イベントなどを起こしても面白くなる可能性は感じられます。」と分析します。
知らないことがまだまだ多いワーカー達
日頃働く場所について、比較的良いイメージを持っているワーカーの皆さんですが、OBPの取組みの認知について取られたアンケートでは、9つ中5つの取組みが60%台を超えて認知されていないという結果に。
ワーカーの皆さんは、どこで何をやっているかがそもそも分かっていないことが伺えます。
しかし同時に、「知ってみると興味はある」という答えが9つ中7つも60%を超えている結果となりました。
イベントの主催者によるワーカーへの認知活動は、ひとつの課題となりそうです。
ワーカーの本音炸裂!5つに分けられた現状問題
江口氏によってまとめられた、ワーカーの感じる問題は、大きく分けて次の5つに分類されます。
まちのコンセプト・アピール点の問題
・まちのイメージがビジネス感に溢れているせいか、暗い
・知名度が低い
飲食・買い物・遊び・憩いの機会での問題
・ランチが大混雑、食べる所が少ない!
・アフター5の飲食店に不満!
・ショッピングしたい店が少ない!
活動を促す仕掛け・ソフト面での工夫の問題
・イベントや取組みの情報がわからない!
・ワーカー間・ビル間交流がない!
・OBP内の案内表示がわかりにくい!
交通機能の円滑化問題
・道路・信号待ち・駐車(場)の問題!
・公共交通の利便・施設に問題!
・大阪城ホール帰りの混雑・エレベーター待ち時間!
パブリックスペースの活用・維持管理問題
・駅からOBPまで・プロムナードが味気ない!
・環境・美観・美化の問題!
・アトリウム空間がもったいない!
・川・川沿い空間がキタナイ!
ソフト・ハード両面からの問題が浮かび上がりました。
潜在的に不満を抱える人が多い可能性
最初「これはおかしい!」と思っていることも、そこに居続けると「まぁ、仕方ないか」や「理想はあるけど、出来ないなら違う方法を取ろう」など、妥協を妥協だと思わなくなった経験はあるでしょうか?
この心境、実はセッションの中でも現れていたのでした。
フィッシュボウルでの本音トークでは、多くの方がランチタイム・アフター5の不満点において、
「ランチする場所が少ない」
「買い物をするお店がない」
「OBPで仕事以外過ごす場所・楽しみが特にない」
といった、“ご飯の場所問題”や、“エンターテイメントがない問題”が共通の話題として出てくる結果に。
「約20名の話し合いの場ですが、聞けば出てくる。この意見は実はもっと潜在的に日頃多くの方が不満を抱えている可能性が高い。」と江口氏は言います。
期待するからこそ、不満もある
参加されていたIT企業の50代男性は、
「今回のセッションに参加して、まずは自分のOBPで働くことについての意識が高まりました。恐らく『自分が輝きたい』『もっとこうなりたい』という想いは、多くのワーカーが潜在的に求めているはずです。しかし、どこかOBPの限界を感じて諦めてしまっているのではないでしょうか。話し合うほど現実の壁を考えてモヤモヤしてしまいます。」
と大変現実的な問題を語られます。
また、ご自身の経験から、「40〜50代の男性は自分の居場所がなくなることがあって病んでしまう。OBPにはその世代が沢山いて、いやいや仕事に来て帰る人は多いと思います。ハード面やイベント企画だけでは解決できない“自分の存在価値”を高めるような、ソフト面が充実したOBPであればいいなと思います。」と、OBPへの期待ものぞかせました。
不満は期待の現れでもあるのですね。
仕事をするだけの場所で終わってほしくない
現状、仕事だけのために来る場所と言っても過言ではないOBP。
出てきた問題点は沢山あれど、“仕事に来る以外にも楽しませてくれる場所”を期待されていることも垣間見えました。
仕事をするだけの場所に終わらないでほしいと思っているワーカーは、もしかしたら多いのかもしれません。
OBP Style vol.11では、2回目のセッションの様子を中心にお伝えします。さて、どのような解決案が出てくるのでしょうか。お楽しみに!