2016年10月27日より着工された、讀賣テレビ放送株式会社の新社屋。多くの方の期待とワクワク感を集め、2019年9月1日、ついに新社屋より放送をスタートさせました。
OBP Style vol.29では、オープン直後の新・読売テレビを取材。OBPエリアの新たなランドマークとしてどんな風を巻き起こす存在となるのか、掘り下げてみました。
新社屋のコンセプトは「緑を引き込む」
外装は、木・緑・ガラスをふんだんに取り入れた造りとなっており、自然との融合が感じられます。
今回案内をしてくださったのは、新社屋建設推進事務局の荒井副部長。
「大阪城公園のあふれる緑とビルが立ち並ぶOBPエリアは川を隔てて緑が分断されてしまう印象があるので、この新社屋で大阪城公園の緑を引き込み、OBPエリアへ繋げていきたいというコンセプトがあります。」
と、方針の理由を語られます。
新たなオブジェは待ち合わせ場所に
社屋の1階は、旧社屋とは異なり、カフェやコンビニエンスストアも入った、一般に開放された場所に。
正面入口前には「10ball(テンボール)」と呼ばれるオレンジ色のオブジェが皆さんを迎えます。「10」は読売テレビのチャンネル数。ボールは「ytv」のロゴにもある丸いマークです。ボールが弾む様子は、社員の弾ける想い・ワクワク感を表現しています。
正面玄関は、OBPの目抜き通りであるパークアベニュー側に。10ballを目抜き通りに置くことで、北は京橋駅、南は大阪城公園駅から来る人々にも、新たな待ち合わせの目印となります。
通りすぎる人も、触ってみたり、歩きながら視線を合わせていたりと、10ballへの注目は高い印象です。
様々な設備と仕掛けの1階、既に多くの人でにぎわう
一般開放は9月2日よりスタート。オープン2日目にして、既に多くの人が1階の開放スペース「10plaza(テンプラザ)」で休憩されていました。
フロア内のカフェ「33(さんさん)cafe」は席の9割が埋まっており、カフェスペース以外の場所にも涼みに来ている人で満席に。
372インチの大きなデジタルサイネージ「10vision(テンビジョン)」もお出迎え。オープン前に、外からこのビジョンを見られた方も多いことでしょう。
1.9mmの粒子で映し出される4K映像は、迫力がありながら近くで見ても再現力に富んだ繊細なものになっています。
併設されているセブンイレブンには、読売テレビのキャラクター「シノビー&ニン丸」のお土産コーナーが設置されており、インバウンドによる海外の旅行者の方も店内に多く見られます。また、OBPエリアの中央側に位置するため平日は別のビルからも足を運ぶワーカーがおられるとのことで、わずかながらOBPワーカーにとってのランチ事情の変化も起きているようです。
人との接点にぬくもりを持たせる拘り
様々な人との接点を生む建物ゆえに “ぬくもり”は大切なキーワードとされています。
例えば柱に着目してみると、コンクリート感が出ないように杉板を転写され、木の風合いが見て取れます。また、10mを超える柱ともなると、どうしても人の目線の高さにコンクリートの継ぎ目が現れてしまうそうですが、この柱は現場で1本ずつ固めてその場で立てられたそうです。
ロゴも、これまでの黄色・オレンジ色ではなく木目に。ぐっと印象が変わっています。ほかにも、あらゆる扉に木を採用するなど、ぬくもりへの拘りはあちらこちらに感じられます。
名探偵コナン、数々のおもてなし
新社屋オープンを前に早々にお披露目されたのは、読売テレビを代表する番組のひとつ「名探偵コナン」の銅像。歩行者、旅行客、大阪城ホールの来場者など、様々な人が足を止めて写真を撮っている姿は、必ずと言っても良いほど目に入ってきます。
銅像の前にはQRコードが足元に。ここでしか見られない特別映像がQRコードによって観ることができます。おもむろにスマートフォンを取り出して読み込む人の姿も。
先述の1階10plazaに入れば、「名探偵コナン」の登場人物があちらこちらに潜んでいます。10visionには、平日10時・12時・15時・18時、土日祝12時・13時・15時・18時のタイミングでコナンの時報も流れます。特別映像とのことなので、城まちエリアに足を運ぶ目的が新たに生まれたとも言えるでしょう。
これらの仕掛けに出会った時、ちょっとしたワクワク感が生まれそうです。
このように「名探偵コナン」尽くしのおもてなしは、作品のファンのみならず、近隣エリアに足を運んだ人をOBPエリアへ誘導していると言っても過言ではないでしょう。
「楽しんでほしい」という想いは至る所に
建物内のインテリアの一部は、自社の美術制作に関わるスタッフの方も関わり実現させたものがあるとのこと。
10plazaで一般の方が腰をおろしていたオレンジ色の円形のベンチは全て繋げば10ballが出来上がるそうです。2階の来客スペースから下を見下ろす「名探偵コナン」のキャラクターなども自社による発案。
至る所に「せっかくなら楽しんでもらいたい」という遊び心と、テレビ局としてのプライドが感じられます。
社員の要望を取り入れた飲食スペース
OBP Styleの取材初となる社員食堂訪問もさせていただきました。
2フロアが吹き抜けで繋がった社員食堂「shiro(シロ=城)」と、カフェ「sora(ソラ=空)」。ガラス張りで開放感が満点です。
カフェ「sora」は、今回メニューを決めるうえで社内アンケートを取り、女性社員熱望のヘルシードリンクメニューも導入されたそうです。
読売テレビのキャラクター「シノビー&ニン丸」のオリジナルパンは、社員だけが食べられる限定モノ。
ここで働く方にとっても大変居心地が良さそうです。
屋上OBPエリアだから眺められる景色は社員の憩いの場に
大阪城ホール側から社屋を見て左側の突出した階では屋上緑化も進んでいます。
太閤秀吉が愛でたと言われる「太閤千代しだれ」の遺伝子を受け継ぐ枝垂れ桜をはじめ、紅葉など数々の種類が植えられており、まだまだ若い木が多いので、四季だけでなく成長まで楽しめそうです。
また、この場所は天気予報のコーナー等でも使われるそうなので、テレビで木々の季節ごとの変化をチェックしてみてはいかがでしょうか。
眺めは、大阪城はもちろんのこと、天王寺のハルカス、森ノ宮のNHK、梅田のビル群まで、大阪市内を見渡せる眺め。OBPに位置するからこそ実現できる景色であると実感します。
まるで大阪城公園の自然がこの屋上まで繋がっているようにも感じられ、ここからOBPエリア内へ自然を繋げていくイメージもでき、「緑を引き込む」というコンセプトを一段と強く感じられる場所と言えるでしょう。
働き方改革を考慮した仕事スペース
続いて、社員の働く環境に着目して見てみます。
読売テレビ社内には社員専用のWi-Fiが使え、どこでも仕事が可能になるため、自分のデスクだけでなく、食堂やカフェ、休憩スペースなど、コワーキングスペース感覚で仕事ができるようになっています。
「この社屋を計画する際、働き方改革についても検討しました。制作現場では資料も多く、“自分の城”というようなものを持ちたがりますが、社内は通信機器、パソコンなどを全てモバイル化しているので、いつでも場所で気分を変えて、自由な発想で楽しく仕事をしてほしいなと思っています。」
と荒井さんは話されます。
この日も、社員の方が数名パソコンを持って「sora」で仕事に取り組まれていました。
カフェ「sora」のロゴは北欧風。木目調のあしらいも加え「癒やし」への拘りが見受けられます。
社外の方だけが楽しめる場所ではなく、何よりもここで働く皆さんがリラックスして楽しく仕事に取り組めるような工夫が細部まで行き渡っています。
もう、夜が暗いOBPではない
新社屋が出来たことでOBPの景色が大きく変わったのは何と言っても夜なのではないでしょうか?特にOBPから大阪城公園駅へ向かう道は、閑散として灯りのないイメージを持たれる方も多いかもしれません。
夜はビルが19時〜22時(※季節によって時間は変わります)の間、ライトアップされるとのこと。これにより、JO-TERRACE OSAKA までの道のりは夜の時間帯も明るくなっていました。
橋から写真を撮る歩行者もおられ、新たな夜の撮影スポットになりそうです。
水面にもライトアップが映し出されており、仕事帰りのワーカーにとっても、きっと気分転換になる景色であることでしょう。
にぎわい創出と、情報発信の継続
荒井さんに新たにスタートされた読売テレビは、OBPでどのような立ち位置なのかをお伺いしたところ、
「今回の新社屋は、民間都市再生事業計画の認定を受けたプロジェクトでもあり、私たちは『京橋と大阪城を繋ぎ、人の流れを創り出す』という目的を持っています。
OBPエリア全体としても「城まちフェスティバル」など、人を呼ぶための取組をされているので、連携を取ることで人の流れを創出したいという想いは持っています。
一方で、私たちはテレビ局として、常に役立つ情報を発信し続けられる強い基盤を持っておかねばなりません。
この2点を達成することが読売テレビとしての使命であると考えています。」
とお答えくださいました。
にぎわい創出と、情報発信の継続
OBPへ人の流れを呼び込むためのポイントをお伺いすると、
「OBPに人を呼び込むための仕掛けはまだ十分でないと感じています。
人に足を運んでもらうためには、目的を持った人が来る場所にしていかないといけないのではないかと思います。
読売テレビとしても新社屋のにぎわいについて考える際、『これをやっているから、ここへ行きたいね』となるようにするにはどうしたら良いかという検討を重ねていました。その一つが、社屋をシンボリックにすることであったり、待ち合わせや居心地のよい空間造りであったりします。
ずっと仕掛けるのは大変なことだと思いますが、特別な時だけでも足を運んでもらえる場所やポイントを創って、このエリアへ来る理由を見つけられるようにすることが大切なのではないでしょうか。そして、その展開が“まち”全体で創り上げていけると、状況は変えていけるのかなと思います。」とお話くださいました。
にぎわいへの意識を常に持って情報発信をするテレビ業界。OBPの活性化につながるヒントもありそうです。
ランドマークをいかにまち全体で盛り上げるか
時々OBPエリアの案内板を見ている方を見かけますが、案内板にはビル名があっても「このビルには何があるのか」は示されていません。
「OBPでは何ができるのか」を一般の方が早い段階で把握できれば足を運ぶ人がさらに増えるのだと、今回の読売テレビ新社屋の一連を見ていると気づかされます。
準キー局と呼ばれるテレビ局がOBPエリアにあるということ、大阪城をはじめとするスポットが間近あることは大変な強みであり、人が足を運ぶきっかけはすぐそばにあります。
OBPはそんなランドマークと如何に連携していくかがひとつのポイントとなりそうです。
まずは様々な仕掛けが潜む読売テレビ新社屋とどのような連携ができるのか、皆さん一度足を運んでみてはいかがでしょうか?