vol.48 ブロックごとに見えてくる植栽の個性 植栽管理のプロに聞いたOBPの緑の楽しみ方

2021.8.27 更新

大阪で最も緑が多いビジネス街として知られるOBP。エリア内の植栽は、各地権者によって管理されています。今回は、住友生命OBPプラザビル周辺の植栽管理をされているイビデングリーンテック株式会社と、ホテルモントレ ラ・スール大阪の周辺および館内の植栽を担当される株式会社竹中庭園緑化の方々に、それぞれ解説付きで植栽めぐりをお願いしました。
OBPの植栽事情と、プロは一体どのような視点で植物と向き合っているのか、緑の楽しみ方についてお伺いします。

欅(けやき)をメインとしたOBPの緑化

欅をメインとしたOBPの緑化

今回お伺いした植栽管理を担当している2社は、ビル建設時よりデザインされた植栽を健康的で美しく維持するべく、剪定や土の調整を年に数回行っています。
皆さんにとって、OBPエリアで印象が強いのは特に欅の木ではないでしょうか?
これはOBPエリアで建設を行う際の共通事項として「植栽に欅を取り入れる」というルールがあるそうです。
欅の葉が広がっているメインストリート(パークアベニュー)では、四季の移り変わりを感じたり、夏の暑さを凌いだりと、街を歩く人にとって大きな存在になっているはず。

陰陽を計算した植栽。ビルの間でも緑が育つ

陰陽を計算した植栽。ビルの間でも緑が育つ

OBPキャッスルタワーと、ホテルニューオータニの間で音を奏でるカリヨン。このカリヨンから奥へ沿って続く植物や、南ブロック(ホテルニューオータニ大阪ビル、住友生命OBP城見ビル・OBPプラザビル、OBPキャッスルタワービル)の一帯の植栽は、住友生命保険相互会社の依頼のもと、イビデングリーンテック株式会社が管理しています。

清水さん・磯貝さん

案内くださったのは、OBPを担当されている造園事業本部の清水さんと磯貝さん。
造園工事は当時の業者によるため設計には関わっていないとのことですが、管理をしていれば設計のコンセプトが見えてくるそうです。さすがはプロ!

アガパンサス

南ブロックは複数の樹木がメインで組み合わさっているのが特徴的で、ところどころにアガパンサスなど花の咲く種類も組み合わせられているようです。
とは言え、地上1階の部分はビルの間にあるため日照は少なめ。それを計算してか「陰樹」をメインに植えられています。

樹木は「陰樹」「陽樹」に分けられ、椿など色の濃い緑・黄緑は陰樹に当たります。日陰で強く生きることができ、日当りや地面の照り返しが良すぎると逆に焼けて葉の色は汚くなってしまう特徴を持っているそうです。
素人目には「植物」のひと括りで見てしまうところですが、植物の個性を見極め、計算が施されていることがわかります。

ビルの管理会社との連携で、植物を見守る

ビルの管理会社との連携で、植物を見守る

定期の手入れは年間で3〜4回ほど。シーズンごとの剪定を行います。

「OBPエリアの環境は、気温差などで見ると市内のほかと大きく異なることはありません。ただ、建物の間では風の勢いが変わるということはあります。また、風通しが悪い場所については、虫が発生しやすいことがあります。年間の手入れのタイミングでは薬剤散布などを行い病害虫の駆除を行いますが、日々の経過観察はできないので、ビルの管理をされる方の巡廻でチェックをしていただき、何か変化が見られた時は緊急で駆けつけます。」
と清水さん。
なるほど、ビルの管理会社さんとの連携で、日々植物の健康が守られているのですね。

緑の絨毯!肩の高さに剪定の苦労が見え隠れ

緑の絨毯!肩の高さに剪定の苦労が見え隠れ

南ブロックの植栽でプロの業が光る場所は、特にいずみホールのある「住友生命OBPプラザビル」周辺。
絨毯のようになめらかに剪定されている風景は南ブロックで最も見どころのある植栽です。
手前に見える葉の小さい低木「サツキツツジ」と、奥に広がる大きな葉の低木「ヒラドツツジ」が一面に広がり、所々に高木「シラカシ」が植えられアクセントになっています。

ツツジは低木と言えども成長すれば150cmほどの高さになり、たくさん伸びる枝は1本たりとも折ることのないよう進まなくてはなりません。
枝を避けて進むどころか、剪定機を持ちながらかき分け、足ひとつ入るくらいの隙間を見つけて奥まで踏み入り、再び足場を見つけながら戻る。もちろん戻る際には、刈り落とした木々の残骸を一通り寄せて、通路まで持ってこなくてはいけません。
蜂の巣が隠れていることもあり、蜂に刺されてしまうこともしばしば。

…この説明を聞いているだけでも作業者の方の苦労が目に浮かんできます。
お二人も、この場所の剪定が最も高いレベルを必要とするのだと話してくださいました。

花と木にこだわりのあるホテルモントレ周辺

花と木にこだわりのあるホテルモントレ周辺

さて、今度はホテルモントレ ラ・スール大阪が入るマルイトOBPビル周辺へ。
こちらの植栽を管理する株式会社竹中庭園緑化 造園事業部チーフの村橋さん・新規事業開発部次長の溝手さんに、ご案内いただきました。

ウェディングチャペルの花

竹中庭園緑化は、ラ・スール大阪が開業した2005年よりタッグを組んで植栽管理を担当している会社。地上周辺の植栽のほか、15階フロアのウェディングチャペルや茶室など、大切な催事に使われる場所においても生花や植木を使用し、日々の管理を行われています。

同行いただいたホテルモントレ ラ・スール大阪 企画広報係長の出納さんは
「私たちホテルの者が水やりをしてもうまくいかなくて、やはりプロによる管理というのは大切だと思います。暑い日も寒い日も、いつもこうしてきちんと手入れをしてくださっているので、本当にありがたいことです。」
とお話されており、仕事のパートナーとして長年培われた強い信頼関係を感じます。

台風の影響を受けながらも強く生きる植物

台風の影響を受けながらも強く生きる植物

エントランスの正面にそびえ立つ三角錐の「レイランディ」は、ホテルモントレを象徴する木。台風の影響で傾いてしまうこともありますが、都度丁寧に対策と手入れが施されています。

サルスベリ

また、ytv京橋ビルや富士通関西システムラボラトリとの間にある並木も道を挟んだ敷地内も担当されています。
ここに並ぶのは夏の樹木「サルスベリ」。16年目を迎えます。ここ数年はビル風のほか様々な気象条件によって花がつかなくなってしまったようですが、今年は珍しく少し花をつけ始めていました。
徐々に元気を取り戻してくれたら、一層明るい通りになりそうですね!

カラフルな植栽はワーカーの癒やしにもなっている

カラフルな植栽はワーカーの癒やしにもなっている

マルイトOBPビル周辺の植栽はなんと言っても「カラフル」であること。植えられている花の種類はアジサイ、ローズマリー、赤い実を付けるモチの木、ドウダンツツジ、ジンチョウゲ、アベリアなどなど、15種類程度。
ビルオーナーは大の花好きとのことで、いつの季節でも見る人が花を楽しめるようにと、デザインにもその意向が反映されているのだそうです。
特にプランターが並んだスペースは、シーズンごとに植え替えを行っており、様々なデザインを楽しめる癒やしの場所となっています。ここではOBPワーカーが休憩時間に利用している姿もよく見かけます。

アジサイ

また、ワーカーの方や近隣住民の方から問い合わせも受けているというのが、ベニスモモの木やアジサイの木。
ベニスモモは春になると桜よりも一足早く満開になるため、「この木は何ですか?」という問い合わせが寄せられるようです。
アジサイは植えられている花の中でも「ホテルモントレといえばアジサイ」と言われるほど象徴的な花。見応えがあるので、季節になったら是非ホテル周辺を散策していただきたいところ。

植栽のビフォーアフターは一番の見どころ

植栽のビフォーアフターは一番の見どころ

せっかくプロにお話を聞く機会があるので「植栽の見どころ・楽しみ方は何ですか?」という質問をしてみました。

イビデングリーンテックの磯貝さんは、剪定作業者としても楽しんでいるポイントを話されます。
「作業者は職人気質の者が多く、如何に整えられるかにこだわりを持って取り組みます。剪定後に美しく整った樹形の変化を見るのが楽しいと感じる点ですね。
もしも機械化が進むことでロボットが使えるようになったとしても、剪定作業は無理なのではないかなと思います。木も生きているので、折らないようにと愛着を持って接していますから。
ワーカーの皆さんには造形美や剪定のビフォーアフターを見ていただけたら良いですね。私たちは土日に作業を行いますので、月曜日からちょっとおもしろくなるのかなと思います。」

植栽のビフォーアフターは一番の見どころ

イビデングリーンテックの清水さんに同じ質問をしたところ、
「木々が伸びて草も伸びて…という状態から、剪定されるとやはり気持ちがスッキリとしますので変化を楽しんでいただければ嬉しいです。
ビルだけが無機質に建っているだけだと圧迫感も感じますが、そんな印象も和らげるのが緑の効果ですよね。
緑があるとビルの見え方も変わり、そのビルに入居している会社さんのイメージも少なからず良い影響があるのかなと思います。
人の往来が盛んな場所でここまで緑がある所はOBPや大阪城公園くらいなので、貴重だと思います。公園はあっても、ビルの敷地内でこれだけ植栽を整えるというのは少ないです。
ある意味、贅沢な環境なのかもしれません。」

と教えてくださいました。
グーグルマップで見てもOBPエリア周辺は緑が多いことが分かるそうなので、ネットでの楽しみ方もありそうです。

色や葉の動きを見て感じるだけでも安らぎになる

色や葉の動きを見て感じるだけでも安らぎになる

竹中庭園緑化の溝手さんは次のように答えてくださいました。
「弊社社長がよく言うのが『人は風に揺れる葉を見るだけで心が和む』ということです。人々は生活が自然から離れてしまうと心が固くなっていってしまいますが、生活の中に植物があるだけで心は安らぎます。
忙しいとなかなか立ち止まれないかもしれないですが、風にそよぐ葉や、木漏れ日なんかを、立ち止まるきっかけとしていただければ良いなと思います。」

ついつい毎日下を見て歩いてしまいますが、上の景色を意識するだけでも気分を変えられそうです。
一方の村橋さんは色に着目して教えてくださいました。
「私が個人的にも好きなのが新緑の色です。
夏のカラフルな花や、秋の紅葉なども美しいのですが、3月〜5月初旬に冬を越えて一斉に新芽が出てくる季節は非常に綺麗であると思います。
『緑色』でひと括りに考えていると気づかないかもしれませんが、冬場の落ち着いた深い緑色から、春先になって明るい黄緑色がどんどんと現れる様子は、元気も貰えて、楽しめる見方なのかなと思います。」

「植栽」を切り口にすると新たな発見もある

OBPのキャッチフレーズ「水と緑に囲まれたOBP」は何度か本メディアでも登場しており、これを耳にされた方もいるのではないかと思います。今回は初めて「植栽」という切り口で取材をしてみましたが、「水と緑」というフレーズがより具体的に見えてくるのではないでしょうか?
OBPの緑は、夏の暑さや冬の寒さの中、日々植物の生命を守ってくださる方の努力によって維持されています。また、剪定された木々の造形美や季節ごとカラフルさで変化をもたらす花々は、シャープなビルとのコントラストを作り出して見応えをアップさせています。

そんな植栽にまつわる様々なストーリーを思ってOBPを歩いてみると、より一層OBPを楽しめるはず。
みなさんも是非プロ直伝の楽しみ方を試してみてください♪

Wanted!

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